借金で始まった新しい生活。
女の実家から車で20分程離れた古いアパートの1Kを借り少しの家財道具妊娠で働けなくなった女は専業主婦になりほぼ初めての育児。この頃から私は毎日お腹が空いていた記憶しかない。男は時間が不規則な仕事だったので男が帰宅するまでご飯が食べられなかった。
女は日中寝ていることが多く私は一人近所の公園で過ごしていた。たまに仕事帰りの祖母が女に内緒で私の様子を見に訪れていた。「一緒に帰りたい!」と泣いてすがる私だったが祖父が心労で寝たきりになり自宅で介護をしながら働く祖母にはどうする事も出来なかった。まだ3歳にもならない子どもが一人公園で過ごす姿は異様だっただろう。近所のおばさん達からお菓子やおにぎりを貰った日もあった。
暑い日が続いた頃に妹が産まれた。産院前で祖母・妹を抱く女・私の3人で写真を撮った。妹が家に来てから男の帰宅が早くなり家中が暖かい空気に包まれていた。男が家に居る間は幸せな時間が流れていた。男を仕事に見送ると女は一日中怒っていた。何をしていても怒られるので相変わらず一人で公園で遊んでいた。昼前から一度も帰宅せず夕方まで公園で過ごすのが日課になっていた。見兼ねた祖母が何度か女に諭したが
お金が無いから託児所に入れられない。
時間に余裕がない。
赤子の育児が大変で面倒見れない。
文句言うなら引き取って育てて。
埒が明かないので男に話した。男は祖母の話を信じられず数日偵察して事実を目の当たりにし祖母に謝罪し女を諭し昼食時も帰宅するようになった。昼食前と夕方の帰宅時は男が公園に迎えに来る日々。公園に行けない雨の日は特に女の機嫌が悪く一日中女の金切り声を聞いていて憂鬱だった。
子どもが増え手狭になったので市営の新築住宅に引っ越しが決まった。