裕福ではないが子育ても終わり古い長屋で慎ましく暮らしていた老夫婦。母子での独立した生活をさせる為 貯金する事を条件に女を働きに出した。警察沙汰になり実家の居心地が悪かった女は現役で働いていた祖母と退職し病気療養していた祖父に赤子の面倒を押し付け喜んで働きに出た。
祖母はとてもよく働く人だった。自転車の籠に私を乗せ30分程離れた託児所に預けそこから会社へ走り夕方の迎え後帰宅し寝床に着く祖父の食事を用意し軽く食事を済ませると風呂な無い家だったので近所の銭湯へ私を連れ番台や風呂掃除の仕事を済ませ一緒に風呂に入り夜遅く寝入った私をおぶって帰宅し翌日の準備。今思えば祖母が横になって休んでいる姿を見た記憶が無い。
私が歩くようになると祖父の体調が良い日は公園まで散歩しのんびり過ごしたりパチンコをする膝の上で球の行方やチューリップの開閉を眺めたり日用品の買い物に行ったりとのんびりとした時間を過ごしていた。赤子の為にと生活していた祖父母だったが長くは続かなかった。
2年が経った頃、夕方に女が男連れで帰宅し「妊娠した」と。突然の事に日頃寡黙な祖父が激高した。自分の子どもじゃないのに愛情を注げるのか?一人の子どもを食べさせるのがやっとなのに生活出来るのか?新しく住む家や出産費用はどうするのか?女と10歳も年上の男で貯金も無く今まで独身だった事に不信感を持っていた。話し合いは朝までかかったが互いに譲らずこれまで無言だった祖母が唐突に至って冷静に口を開いた。高校生の頃祖父に黙って堕胎していたこと。子どもの父親は誰か分からないこと。前夫の浮気発覚時に警察沙汰になり手が付けられなかったこと。実家での家事・育児は放棄していたこと。一人の子どもも育てられないのに信用が無いこと。家にお金を入れないのは貯金していると思っていたが散財していたこと。今後、金銭的援助は出来ません。それでも他人の子を自分の子として育てる覚悟があるのなら好きにしてください。皆、突然の事に驚いた。
祖父は怒りに震え
女は憎しみの目を向け
男は唖然とした